知ってる?お得な優待タダ取りの裏ワザ
企業が株主還元の一環として提供している株主優待。中には外食や買い物をお得に楽しめる魅力的な優待も多いですよね。株主優待をお目当てに株を購入している人々も多いのではないでしょうか。
そんな個人投資家に人気の株主優待ですが、「クロス取引(つなぎ売り)」というテクニックを使えば、ほんのわずかな手数料のみで株主優待を獲得できることを知っていますか。
コストがほとんどかからずに、タダ同然で優待取りができると人気が高まりつつあるクロス取引。
本記事ではこの優待クロス取引について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
クロス取引の概要
そもそもクロス取引とは?
「クロス取引(つなぎ売り)」とは、株主優待の獲得を目的として、現物買いと信用売りを同じタイミングで取引する手法のことをいいます。
「同じ銘柄を、同じ値段&株数で、売り買い同時に行うこと」
これが優待クロス取引で損しないための最大のポイントです!!
そして、取得した現物と信用売建玉を権利付最終日まで保有すると株主優待の権利が得られます。実際に株主優待が届くのは、権利付き最終日の約3ヶ月後です。
なぜ株価下落による損失が抑えられるの?
基本的に、現物買いと信用売りは正反対の値動きをします。
そのため、優待クロスで現物買いと信用取引の売建玉を同じ株数・同じ価格で取得すれば、たとえ株価が下がった場合でも、現物買いの損失と同じだけ信用売りの方で利益が出ます。
そのため、現物買いの損失を信用売りの利益で相殺できプラマイゼロとなるので、株価下落で損する心配なく優待取りを行うことができるのです。
クロス取引のメリット
わずかなコストで優待生活を満喫できる
クロス取引の最大のメリットは、わずかなコストと手間のみで株主優待をゲットできる、ということに尽きます。
たとえば、日興証券で権利付最終日に30万円の株をクロスすると、約23円の手数料で株主優待がもらえます。たった数十円で株主優待がもらえるなんてすごく嬉しいですよね。
一般信用売りを使えば、逆日歩という追加コストが発生することもないので、より安全に株主優待を手に入れられますよ。
株価が下落しても損しない
基本的に、クロス取引では株価の差額による利益や損失は発生しません。
現物で株を購入した場合、株価が下がると下がった分だけマイナスとなりますよね。
でもクロス取引の場合は、現物買いと同時に信用売りを行います。そのため現物でマイナスとなっても信用の方でプラスとなるため、損益が相殺されプラマイゼロとなります。
反対に、たとえ現物で利益が出ていたとしても信用で損失が発生しているため得することもありません。
余剰資産を有効活用できる
もし直近使用予定のない現金がたくさんある場合、クロス取引は銀行に預けておくよりも有効的な資産の活用方法だといえます。
クロス取引の利回りを考えると、銀行の金利よりも圧倒的に高いことが多いです。たとえば、10万円代で1,000円分のクオカードや優待券がもらえるような高利回りのクロス銘柄もたくさんあります。
そして優待クロスでは現金の拘束期間が比較的短いので、余っている現金でクロス取引を毎月行い、取得した株主優待を日常生活で有効活用すれば、結果的に節約につながるので資産をより効率的に増やすことができます。
クロス取引のデメリット
人気の優待は争奪戦が激しい
前提として、一般信用の新規売りを行うには、証券会社に在庫が必要です。在庫とは注文可能な株数のこと。
証券会社の一般信用の在庫には限りがあり、権利付最終日に向けどんどん減っていきます。人気優待の場合は最終日の1ヶ月以上も前に在庫がなくなることも。その後在庫が復活することもありますが、人気の銘柄は復活しても一瞬でなくなります。
そのため、たとえ欲しい銘柄であっても、在庫が取れずに結局クロスできないまま終わってしまうこともあります。
一般信用売建できる銘柄は限られている
実は、すべての銘柄で一般信用売りができるわけではありません。
一般信用売建ができる銘柄は証券会社ごとに決まっていて、その銘柄数も証券会社ごとに異なります。
どんな銘柄でも優待クロスができるわけではなく、その証券会社が取り扱っている一般信用銘柄の中から自分が欲しい優待銘柄を選んでクロス取引することになります。
注文ミスにより損することもある
どんなに気を付けていても人間ミスしてしまうことってありますよね。
たとえば、信用売りの注文を入れていたけど現物買いの注文を忘れていたり。現物と信用で注文株数が異なっていたり。
ルール通り正しくクロス取引できていれば、株価の変動で損することはありませんが、このように注文ミスなどの手違いがあると思わぬ損失が出てしまうことがあります。
クロス取引のやり方
クロス取引は次の2ステップで行います。
- ステップ1
権利付最終日までに、欲しい優待銘柄の「現物買い注文」と「信用売り注文」を同じ株数ずつ、「成行」で同時発注する。
- ステップ2
権利付最終日の翌日以降に「現渡」を行い、現物買いと信用売建玉を決済する。
では、それぞれのステップを詳しくみていきましょう。
ステップ1:現物買いと信用売り
まず、ステップ1では、権利付最終日の取引終了時刻である15時までに現物買いと信用売りを同じ株数、同時に成行で注文します。成行注文は取引時間外に行いましょう。
市場が開いているときに取引注文を行うと、株価の値動きによっては同値で売り買いの注文が成立しない場合があるので気を付けてくださいね。
信用取引には「制度信用」と「一般信用」の2種類があります。どちらも優待クロスに使えるのですが、おすすめは「一般信用」です。
なぜなら「制度信用」を使うと「逆日歩」という追加コストがかかる場合があるから。逆日歩は取引した次の日になって初めてその金額や発生有無がわかります。 場合によっては逆日歩が優待金額よりも高額となってしまうこともあるので制度信用は避けた方が無難です。
ステップ2:現渡
ステップ2では、現渡を行い、現物買いと信用売りの損益を相殺します。現渡はいつ行うのかというと、「権利落ち日(権利付最終日の翌日)」中に約定すればOKです。現渡の注文は権利付最終日の取引終了後から行えますよ。
こうして現渡が約定したら優待クロス取引はめだてく終了。あとは約3ヶ月後に株主優待が届くのを待つのみです。
クロス取引ができる証券会社
一般信用売りでクロス取引ができる証券会社は次の通りです。
- SMBC日興証券
- auカブコム証券
- 楽天証券
- SBI証券
- GMOクリック証券
- 松井証券
- マネックス証券
日興証券やauカブコム証券は一般信用で売り建てできる銘柄数が多く、手数料も安いのでおすすめです。
クロス取引には信用口座が必要
クロス取引では信用売りが前提となるので、総合口座のほかに信用取引口座が必要となります。
信用取引口座の開設から信用取引を開始するまでの流れは主に次の通りです。
信用口座の開設には審査があります。信用取引は現物取引よりリスクが高く大きな損失が発生する可能性があるためです。
審査内容は証券会社ごとに違う可能性があるため詳しくはわかりませが、日興証券では信用口座開設の際、少なくとも以下の条件を満たしている必要があります。
- 金融資産の総額が300万円以上ある。
- 信用取引の経験、もしくは1年以上の現物株式の取引経験がある。
※日興証券HPより
つまり、金融資産額や投資経験が審査基準の一部となっているようです。
わたしは日興証券で信用取引口座を開設する際、念のため総合口座に300万円入金してから信用口座を申し込み、無事に口座開設しました。(この行為にどれだけ意味があったかはわかりませんが・・・笑)
そして信用取引を開始するには、最低でも委託保証金30万円が必要です。取引開始前に余裕を持った金額を入金しておくと安心です。
クロス取引の必要資金はいくら?
先述した通り、信用取引を行うには証券会社に担保として最低委託保証金が必要となります。
最低委託保証金 | 30万円 |
---|---|
委託保証金率 | 30% |
委託保証金とは信用取引を行うための必要資金で、現金のほか、現物株式など有価証券の80%相当の金額でも代用可能です。委託保証金率は、信用取引で新規建玉を建てるために必要な保証金の割合をいいます。
信用取引の際は、「最低委託保証金30万円以上」と「委託保証金率30%以上」のどちらも満たしている必要があります。
説明だけではわかりにくいと思うので、委託保証金の具体的な計算方法をみてみましょう。
上記のケースのように、基本的には新規建て約定金額の30%が委託保証金として必要です。
ただ、以下のケースのように、約定金額の30%が30万円に満たないときは、最低委託保証金の30万円を差し入れます。
委託保証金率が30%以上であっても、その保証金が30万円を満たしていないと信用取引ができないので要注意です。
クロス取引にかかるコスト比較
2024年5月時点で、クロス取引にかかるコストを証券会社ごとにまとめました。
手数料や諸経費は手数料コースや取引内容により異なりますが、最安となるものをピックアップしています。
日興証券 | auカブコム証券 | 楽天証券 | SBI証券 | GMOクリック証券 | 松井証券 | マネックス証券 | |
現物取引 手数料 |
現引を使えば無料 | 100万円まで無料※1 | 無料 | 無料 | 100万円まで無料※2 | 50万円まで無料※1 | 100万円まで無料※1 |
信用取引 手数料 |
無料 | 100万円まで無料 | 無料 | 無料 | 100万円まで無料 | 50万円まで無料 | 100万円まで無料 |
貸株料 | 無期限:1.4% | 長期:1.5% | 無期限:1.1% 短期:3.9% |
短期:3.9% | 短期:3.85% | 無期限:2.0% | 短期:3.9% |
買方信用金利 | 2.5% | – | – | – | – | – | 1.8% |
現渡の手数料 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 | 0円 |
管理料 | 無料 | 1カ月経過ごとに 100株あたり110円 |
1カ月経過ごとに 100株あたり110円 |
– | – | 1カ月経過ごとに 100株あたり110円 |
|
プレミアム料 | – | 支払う場合がある | – | – | – | 支払う場合がある |
※1 現物取引・信用取引の1日の約定金額の合算
※2 現物取引・信用取引ごとに1日の約定金額がそれぞれ100万まで無料
優待クロス目的での利用者が多い日興証券ですが、現物取引手数料を見ると他社より正直高いです。ですが、「制度信用買い→当日中に現引」を行うと、現物取引手数料がかからず「1日分の信用金利2.5%分」のコストのみで現物株式を取得できます。
クロス取引で配当金はもらえるの?
現物株式を保有していると入ってくる配当金。はたしてクロス取引でも同様にもらえるのでしょうか。
結論から言うと、優待クロスでは配当金は実質もらえません。
たとえば、優待クロスをおこなった銘柄で1,000円の配当が出た場合のケースをみてみましょう。
優待クロスでは、現物株式を保有しているので配当金が入ります。具体的には配当金の1,000円から税金分20%を差し引いた、残りの800円が配当として入金されます。(税金はわかりやすく端数を切り捨て20%としています。)
反対に、信用売建玉では配当金相当額を支払う必要があります。これを配当落調整金といい、一般信用売りの場合、税引きされず配当金と同等の1,000円を丸々支払います。
つまり、配当として800円が入り、配当落調整金として1,000円が出ていくため、一時的に差額の200円がマイナスとなります。一見損しているように見えますが、これは特定口座で自動的に損益通算され、現物株式の配当金にかかる税金(この場合だと差額の200円)は翌年に戻ってきます。
結果的に、配当金と配当落調整金はすべて相殺されプラマイゼロになるので、配当金は実質もらえないことになります。
まとめ
ここまで優待クロスについて知っておきたい基礎知識を詳しく解説しました。いかがでしたでしょうか。
クロス取引は、株価の変動の影響を受けることなく、株主優待を取得できる投資テクニックです。ルールを守って取引すれば、少ない手数料で株主優待を獲得できます。
ここまで読んで「なんだか難しそうだなぁ」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。優待クロスを理解するには知識も大事ですが、実践が一番手っ取り早いです。信用口座を開設し、実際に何度か取引するうちに自然とクロス取引の流れは頭に入ってきますよ。
憧れの株主優待生活に向けて、優待クロス取引への一歩をぜひ踏み出してみてくださいね。